アトピー性皮膚炎とアレルギー
アレルギー疾患を合併している
子どもの割合
アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻結膜炎の罹患状況を調べたところ、小・中学生ともに約35%(3人に1人)がいずれかの疾患を持っていることがわかりました。また、複数のアレルギー疾患を合併している子どもは5~10%でした。
アレルギー疾患を持つ子どもの割合
小学生
中学生
対象:全国の小・中学生(2005年は約10.0万例、2008年は約9.2万例、2015年は約7.9万例)
方法:ISAAC(International Study of Asthma and Allergies in Childhood:国際小児喘息・アレルギー調査)調査票の日本語版をベースに質問票用紙を作成し、無作為に抽出した学校へ配布後、回収した調査票の解析を行った。なお、小学生は保護者、中学生は本人が質問に回答した。
足立雄一ほか.令和元年度厚生労働行政推進調査事業費補助金 アレルギー疾患対策に必要とされる大規模疫学調査に関する研究による
「日本のアレルギー疾患はどう変わりつつあるのか」; 2020. P8.
アトピー性皮膚炎とその他のアレルギー
疾患との関係
子どもにアレルギーになりやすい体質(アトピー素因)がある場合、アトピー性皮膚炎に始まり、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎など、その他のアレルギー疾患が次々と起こることがあります。
アトピー性皮膚炎を治療することで、それ以降に起こるアレルギー疾患の流れを断ち切る可能性があると考えられており、アトピー性皮膚炎の治療の重要性が高まっています。
アトピー性皮膚炎とその他のアレルギー
疾患が診断された時期
Hill DA. et al.: Ann Allergy Asthma Immunol. 2018; 120(2): 131–137.
Hill DA. et al.: BMC Pediatr. 2016 doi: 10.1186/s12887-016-0673-z.(一部改変)
アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの関係
アトピー性皮膚炎と食物アレルギーはどちらもアレルギー疾患ですが、「アトピー性皮膚炎=食物アレルギー」と考えるのは間違いであり、それぞれ別の病気と考えて対応する必要があります。
乳幼児期に起こる食物アレルギーは、離乳食を始める前に湿疹があったお子さんに多いことがわかっています。また、乳児期の湿疹(乳児湿疹と診断される方が多いようです)にかゆみを伴う場合は、アトピー性皮膚炎を発症していることが少なくありません。
アトピー性皮膚炎では皮膚の「バリア機能」が低下しており、食物抗原(アレルゲン)や刺激物質が入り込みやすくなっています。食物抗原(アレルゲン)が炎症のある場所(湿疹がある部位や乾燥している部位)から体に入ると、その食物抗原(アレルゲン)に対するIgE抗体※を作りやすくなるため食物アレルギーを発症する危険性が高くなります。
※:体内に入ってきた食物抗原(アレルゲン)に反応する物質
アトピー性皮膚炎と食物アレルギー
- 食べものとして摂取
- 消化管を通って
消化される - 過剰なアレルギー
反応が
起こりにくい
- アトピー性皮膚炎などに
よる皮膚の
「バリア機能」の低下 - 皮膚から食物抗原(アレルゲン)
として侵入 - 過剰なアレルギー
反応が
起こりやすい
Lack G: J Allergy Clin Immunol. 2008; 121(6): 1331-1336.(より作成)
近年では「アトピー性皮膚炎⇒食物アレルギー」という関係が強いと考えられており、アトピー性皮膚炎の早期治療が求められています。