患者さんインタビュー

Vol.3

「頑張ってるね!」
「もう大丈夫だよ!」
その言葉で前を向けた。

かゆみに支配された生活

息子に症状が出始めたのは生後1ヵ月半の頃でした。最初は単なる乳児湿疹だと軽く考えていましたが、次第に悪化。くびやわき、肘を中心にじゅくじゅくした状態になってしまったため、皮膚科を受診することにしました。しかし、薬を塗っても良くなったり悪くなったりを繰り返すばかりで、「一体なぜだろう……?」と悩んでしまうことに。生後3ヵ月の時点でアトピー性皮膚炎だと診断されるのですが、そのときは不思議と、少しほっとしたのを覚えています。当時の主治医の先生が「一緒に治療していきましょう」と仰ってくださったこともあって、正体のわからないものと戦い続けるよりも、ポジティブに考えることができたのだと思います。
とはいえ、その後も困難が続くことは変わりませんでした。成長に伴って息子は手を伸ばして患部をかきむしるようになり、布団やおもちゃは血だらけに。日中は“かく”ことばかりに意識を取られ、夜は満足に眠れず、かゆみに生活を支配されたような状態でした。親として何もしてあげられない歯がゆさ、つらさで、私のほうも精神的に追い詰められていきました。

新たな行動が大きな転機に

毎晩のようにネットを検索し、何か役立つ情報がないか探し続ける日々。ネットの情報は信ぴょう性の面で注意しなければいけない点も多いとわかってはいるものの、藁にもすがる気持ちで“検索魔”になっていましたね。何も成果が得られないまま息子は2歳になり、そして、いつものようにネットの画面を眺めていた夜のこと。医師会とアレルギーサークルが共同主催する研修会の情報を見つけました。開催日はなんと翌日で、場所もそれほど遠くない……「これだ!」と運命を感じ、息子を連れて行ってみることにしました。
結果的に、それが大きな転機となったのです。患者さんたちの座談会に参加させていただくと、みなさんから「頑張ってるね!」「もう大丈夫だよ!」と明るく前向きな声を掛けてもらえました。それまではずっと「かわいそう」「大変だね」といった種類の声ばかりだったので、うれしくて、なんだか救われたような気もして、思わず涙がこぼれましたね。そんな私を隣で見ていた息子が「どうして泣いてるの?」と心配そうにしていました(笑)

治療は一日一日の積み重ね

現在診てもらっている主治医の先生は、その研修会のつながりで紹介していただいた方です。正しい薬の塗り方を教えてもらい実践するようになってからは、症状をコントロールできるようになりました。以前は「小さな子どもにこんなにたくさん薬を塗って大丈夫だろうか……?」と躊躇してしまい、自己判断で患部だけに少量しか塗っていなかったのですが、不安や疑問を解消してもらったうえで正しい塗り方を教えていただき、全身にしっかり塗れるようになったのは大きな変化だったと思います。実際に同じように治療を行って改善している仲間と出会えたことも自信になりました。
アトピー性皮膚炎の治療は、一日一日の積み重ね。息子も小学生になり、毎日のスキンケアを面倒くさがるようになってきました。しかし、それでも根気強く、毎日バトルしながらも、こまめに汗を拭く、保湿をする、薬を塗るといった一つ一つを頑張って続けています。
ときどき、数年前を振り返ることがあります。何がかゆみの原因になるかわからないのが怖くて外に連れて行ってあげられなかったり、肌が触れた部分がかゆくなるので抱っこもしてあげられなかったり……そんな日々を思えば、驚くほど普通に過ごせるようになりました。今なら、子どものアトピー性皮膚炎で悩んでいる他の親のみなさんに、そしてあの頃の自分にも、「頑張ってるね!」「もう大丈夫だよ!」と明るく前向きな声を掛けてあげられると思います。

私のPEACEな時間

息子は本が好きで、児童小説や、鳥・虫などの図鑑を読んでいる時間が心落ち着くひとときになっているようです。親の私は、好きな女優さんが出演しているテレビドラマを観ている時間がリラックスタイムですね。
また、ビデオ通話で他の患児やそのご家族のみなさんと話す集まりがときどきあるのですが、子どもたちが自分の食べられるアレルギーフリーのおやつを持ち寄り、みんなでわいわい過ごす時間は本当に笑顔になれます。治療に対する本人のヤル気の面でも、次に顔を合わすときまでに症状をもっと改善しよう!と頑張るモチベーションにつながっているようです。

〈当コンテンツについて〉
インタビュー実施および原稿作成に関しては、大阪狭山食物アレルギー・アトピーサークル「Smile・Smile」様より患者様をご紹介いただき、監修医確認のもと、制作委託業者である株式会社インターサイエンス社によって行われています。また、当Webサイトへの掲載に関しても、患者様ご本人の承諾を得ております。